古今和歌集序に「天地を動かし、鬼神を感ぜしめ、人倫を化し、夫婦を和ぐるは、和歌より宜しきはなし」と。
カッコいいな、映画かドラマである決め台詞みたいです。
天地を動かし、鬼神を感動させ、人々を教え導き、夫婦の仲を和らげるのに、和歌にまさるものはない、なんて。
古今和歌集はごく最近読むようになりました。
僕は文字が大好きで、暇ができると小野道風筆と伝えられるところの本阿弥切の図版を見つつ仮名文字を書いている。
本阿弥切、これが一番好きだ。
世に素晴らしいと言われている手本のようなものなのに、誤字脱字があったりして。いい加減な感じに書かれている歌もあれば、
気力充実して端々に神経が行き渡っている歌もある。その変化も楽しい。
二〇一五年の春に東京の五島美術館へ本物の本阿弥切に会いに行った。
暗いし、目も悪いしでよく見えなかったけれど素晴らしかった。
それは分かるんだ。本物も図版も、ほぼ同じ大きさのようです。
何かしら古典とされる文字を見て書くとき、本物が書かれた大きさで自分も書く、というのは重要なことだと思う。
感覚を追体験しやすいんです。なるほど、こういう感覚か、と納得できる。
これが、本物は大きな屏風に書いたもので、その図版を見て書くのは手のひらサイズの小さな紙でというのでは何にも分からない。何も学べない、と思う。