孫過庭
そもそも運筆の方法は、自分の用意や工夫の中から出るのであります。そして規範として備える古えの人の筆跡に、かならず目を注ぐものです。 そのとき、すこしでも違いがあれば、まるで似ても似つかぬものになってしまうものです。しかし、もしそのコツを理解…
そもそも、悟りの境地のように心の到達するところというのは、たやすく説明し尽くせるものではない。うまく言語で表現できたとしても、それを文章によっては形容しがたいものである。それでも、その境地を、ありありと想像できるような、それを髣髴(ほうふ…
道を体得した人は真理を悟って言葉を忘れ、その要訣を口にすることは、まれである。 爪立つように背伸びして学ぼうとする人は、先賢の風趣を敬い慕って、その奥義を説明するが、説明するといえどもなお疎雑である。 いたずらにその工夫の筋道を組み立て論ず…
この時代を過ぎ、さらに過ぎるほどに、書の真髄に至る道はいよいよ衰微してきた。そして、書を学ぶ人もどこからか疑わしい方法論を聞いては、それを鵜呑みにし人に伝え、枝葉のようなやり方を知りえては、それをやってみたり、過去の伝統と現在の書法とが隔…
私は15歳の頃から、書の道に心を留め、鍾繇(しょうよう)・張芝(ちょうし)の書法の偉業をよく理解し味わい、王羲之・王献之が感じさせる風情をくみとり、鋭意専心して24年を経ました。 書法には、遠く及ばないところがあるけれど、研究心が途絶えたこ…
おそらくは絶版であろう「書譜」(孫過庭)/西林昭一著(明徳出版社)から本文だけを、自分のような「素人がわかる書譜」にしてみました。 名づけて「素人が書譜」です。 それでは孫過庭(そんかてい)先生よろしくおねがいします! 孫:よし! 一度しか言わ…