一所懸命の美
懸命を表現する四字熟語には一所懸命と一生懸命とがありますよね。
あるとき、どう使うんだろうと考えたことがありました。
それで僕は瞬間的に懸命になる時には一所懸命を使い、長い期間にわたって懸命している場合、一生懸命を用いるようにしよう、と勝手に決めちゃいました。
ところでゲーテは「美を生むためには、現象となって現れる一つの法則が要求される」と。
僕の家はいつも散らかっている。
僕は片付けるのが苦手だ。
大抵のことは苦手なので
これだけが特に苦手だという訳じゃないけれど。
自分の家はひとつの世界だ。
この部屋が片付けられる時、一つの法が適用される。
これは先々溜まるものだから箱のなかに入れようとか、これは壁面が良いとか、やることはいろいろだが、依る法は「自分の感性」ひとつである。
その自分だけの感覚がしっかり隅々まで行き渡るように、出来るだけの心労尽くして他の何事にも増して心血注いで片付けていけるなら、そこに何とも言えない「美」が立ち現れてくるだろう。美とはそういうものだと僕は思う。
徹底して一所懸命やらなくちゃならない。
たとえば蜂がつくりだす巣が美しく感じるのもそういうことじゃないのかな。
あるいは、良い民芸品には必ず見られる素朴で押し付けがましくない美も、才能というよりは一所懸命から来るのだと思う。