ある日の美術

仙台にいて絵を描いたり書をやりながら、もろもろ美的なことを研究してます。

灯台のある海

夏の三陸雄勝の海は青くて、蒼くて、碧くて。

青がいっぱいだ。
そんな世界にひたって絵を描くっていうのは楽しい。そんな時、幸せだな、と思う。


キャンバスをセッティングして、油彩道具を入れた木箱を地面に置いた。中には筆が二、三本と細い刷毛を一本、油絵の具を十五本程度入れてきた。

雄勝の灯台のある海の絵


木箱を開ける。いつも、その瞬間はさながら、お昼のお弁当箱を開けるときの興奮がある。絵描きにはそんなことが楽しい。


日に焼けながらの仕事になりそうだった。ペットボトルの水を手の届く場所に置いた。

 

熱中症になったら体中の血が沸騰したような感じになって大変なことになる。舌の根も乾かないうちに飲むとしよう。それは言葉が違うんじゃないか?気にしない気にしない。植物的には根が乾かないうちに水をやるんだから。


空には昼前の太陽がギラギラしはじめていた。
キャンバスを立ててしばらく描いていると、一匹のスズメバチが様子を見に来た。

あの恐ろしい無情な顔をした奴だ。その場所の近くにはどうも奴らの巣があるらしい。こいつは偵察部の奴だろう。ブンブンうなってる。

ここで何してんの、あんた?巣があるんだから、どっかに行ってちょうだいな。行かないなら、こっちにもいろいろと手はあるんだぞ、と。そんな様子だった。


とってもいい場所だから、移動したくないな。それでも無視はできないぞ。ほっといたら偵察部の奴が仲間をたくさん呼んできて追いまわされるんじゃないか?蜂に刺されたら、その方が大変だぞ。割に合わなくならんうち移動したほうがいいのかもな。


しぶしぶ五〇メートルくらい居場所を替えて仕事した。


絵を描くってことは、はたで見ているとお気楽に見える。けれど、私が経験した仕事の中でも一番楽しくて疲れる仕事、が絵を描くってことなんだ。本気でやると、ほとほと疲れるものです。