ドリルゲージ
だいぶ昔「ドリルゲージ」という作品を作ったことがありました。
こういうのはコンセプトが先にあるからコンセプチュアル・アートですね。
下の写真のがそれです。ステンレス製で手のひらに収まる大きさです。
たった一つしかない作品なんですが、今も大切にしまってあります。
大切にしすぎて、どこにしまったのか忘れてしまいましたが、はて?どこにいったかな?
今は道具も無いので作れません。
これは制作に半年くらいかかってまして、小さいですが大作と言えるものでした。
誰に見せてもピンとこない、反応も薄くて、見た目にもパッとしない作品です。
しかし非常な情熱をもって生まれた作品です。
まぁ、往々にしてコンセプチュアル・アートっていうのはそんなのが多いですよね。
とりあえず試作品を作って、
実際に使えるかどうか検証してはまた試作を作り、それで完成の域に達したところで本作を作るんですが、その時点で半年ぐらい経っていました。
これを作った頃、僕は鉄工所で働いていたんです。
こういうのはやっぱり鉄工所でないと作れませんね。
片側が曲げ加工してありますからね。
これは「ドリルゲージ」という名前が示すようにドリルのゲージです。
みなさん、誰でもドリルをご存知かと思います。
穴をあける時に使うあれです。電動器具に差し込んで使うものです。
このドリルゲージは鉄鋼用ドリル専用です。
平たいところに穴があいてますが、とくに意味はありません。
ところでドリルの刃というのは使っているうちに刃先が丸くなって、切れが悪くなってくるもので。
そうなると、これを何とか切れるようにしたいと思う。
しかし、ドリルの刃というのは一見すると丸い棒状なんですが、よーく見るとらせん状になっているわけです。
とても複雑です。
これを切れるように研ぎなおす、というとき、なんとなくやったのでは切れるようにはなりませんよ、絶対になりません。
結論から申せばドリルを切れるようにするには、3点見るべき箇所があります。
その3点さえ押さえれば良いわけです。
その3点がちゃんとなっているか見るための道具がこの作品になります。
作品と言うよりも冶具ですね。
冶具ではあるんですが、まぁ売ってるものではありませんし。
自分で考案してゼロから生み出したものですから、作品といって差し支えありません。
必要が生み出す作品ということができます。
普段電動ドリルを使う人が、これを見たとしても使い方が思いつかないでしょう。
しかし、使い方が分かればとても便利なものです。
一般的に電動ドリルの刃というのは結構な値段するんです。
それがこのゲージを使うことによって鉛筆を削るみたく短くなるまで使えるようになるわけです。
こういう作品は用途があって生まれる作品です。
しかし絵であっても、このドリルゲージが生まれる時のようなプロセスを制作に生かせたら、より良いものを生み出していける気がします。