ある日の美術

仙台にいて絵を描いたり書をやりながら、もろもろ美的なことを研究してます。

死産児について

カンディンスキーは「どのような芸術作品もその時代の子であり、しばしばわれわれの感情の母である。

こうして文化の各時代はそれぞれ、二度と繰り返すことのできない独特の芸術をつくり上げるのである。

過去の芸術原理を蘇らせようとするくわだては、せいぜい死産児にもひとしい芸術作品を産む結果に終わるであろう」と。
模写によって作られる絵は死産児に等しいものしか出来まい、と思う。

しかし誰が見ても見分けがつかなくなるまで同じであれば、オリジナルはどれほどなのだろう?という驚きが生まれる。

書の世界には双鉤墨といって筆跡の輪郭をしき写して、その中を墨で塗りつぶして同じような書跡を造る。

唐の時代に非常に発達したらしくて、王羲之という人の真蹟と伝えられるものはみな双鉤墨であるという。

王羲之は自分がどう頑張ってもたどり着けないと思わせる名峰だ。書跡の辞典を見ると、ひときわ光輝いている。これで、コピーか。オリジナルはどれ程素晴らしいのだ、と。