氷
竹の春は秋。冬は氷の春ですよね。
凍てつく路に氷。
ぴっと張った氷より、誰かに割られた氷のほうが魅力的。
割れたガラスにも似て
氷を見ると思い出す。
僕は昔、クロネコヤマトの配達を引き受けた会社のアルバイトをしていたのでした。
それはスキー板やスノーボードの送られてきた荷物を山形蔵王にある各ホテルに届ける、というもので。
年末から翌年3月末まで働いた。日産のキャラバンというワンボックスを預けられて活躍しました。いちど後ろがよく見えないのに勢い余って鉄柱にぶっつけてボディを凹ましたこともあったっけ。
スキー板や、スノーボードなんていうのは重たいんです。死体が入ってるの? というくらい。
それをね、車にイッパイイッパイに詰め込んで配達です。
山のてっぺんの方にドッコ沼というのがあるんですが、そのすこし上のところにけっこう豪華な山小屋があります。
お一人さまでゴンドラに乗って荷物をお届けに行くんですが、途中15分くらい山の中を歩きます、ダイヤモンドダストなんかも見えたりして。本当に、この先に小屋なるものがあるのかな?と思ったもんでした。
歩みを止めると遭難しても良いですよって景色でね。
夕方5時くらいには、だいたい仕事が終わって山から降りていきます。
僕は仙台に住んでまして、通うと片道2時間から2時間半くらいかかります、冬ですからね。
それで、くたびれちゃいますから週に一度くらい帰ることにしたんです。あとは寝袋を車に積んでおきまして、車で寝泊まりです。
寒いのでね、毎日温泉に浸かって体をぬくめてから、どこかの駐車場で眠りこけます。
車のエンジンをかけたまま寝ても構わないんですがね、音がうるさいでしょう?エンジンの振動も体に伝わってきて可笑しくなっちゃそうです。
それで、エンジンを止めて、吐く息も白くなる中、朝まで寝袋にくるまっているんです。
毎日簡易キャンプみたいな。
真冬だし、大変そうですが、寝袋を良いのを用意したのでね、いい思い出です。